日本の年金について
ご自身が日本で働いていた時の年金はどうなっているでしょうか。
そのまま忘れていらっしゃる方、手続きの仕方が分からない方、日本への一時帰国の予定もなく諦めている方もいらっしゃると思います。
日本の海外年金相談センターの市川俊治所長がドイツに長年暮らしている方々のために分かりやすく説明してくれます。
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市川俊治さんのプロフィール
38年間の民間企業勤務(内8年間米国駐在)後、外務省が2003年から開始した領事シニアボランティア制度の第1期生としてニューヨーク総領事館に3年間勤務。その後2012年からサンフランシスコ総領事館に3年勤務。2012年2月帰国後、6年間の領事業務の経験を基に「海外年金相談センター」を設立し、「年金、国籍、老後の日本帰国」の相談をEメール、電話でボランティアで受けている。
海外年金相談センター
ホームページ http://nenkinichikawa.org
メール shunjiichikawa[at]gmail.com
〒162-0067 東京都新宿区富久町15番1-2711号、Tel/Fax +81-3-3226 3240
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日本の公的年金(厚生年金、国民年金)についての説明です。
海外在住の方は、加入期間が短くても多くの方が日本の年金を受給することが出来ます。2017年8月からは老齢年金を受給するために必要な期間が25年から10年に短縮されより受給し易くなりました。
また、海外からは年金に関する情報を入手するのは大変ですが、日本年金機構のHPや海外年金相談センターのHPを活用されることをお勧めいたします。
- ● 受給資格
2017年8月1日より老齢年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金)の受給に必要な加入期間が25年から10年に短縮されました。ただし、遺族年金、障害年金の受給資格の内厚生年金の受給権者又は厚生年金の受給資格期間を満たした方の加入期間は旧来の25年となりますのでご注意ください。
- 幸いなことに、ドイツにお住まいの方は受給のための資格期間は@保険料納付期間Aカラ期間Bドイツの年金加入期間の合計となります(重複は出来ません)。
カラ期間とは、1961年4月以降20歳から60歳まで海外において日本国籍で在住していた期間です。
- ● 受給開始年齢
厚生年金 早い方で60歳からですが、男性は1961年女性は1966年の4月2日以降の誕生日の方からは65歳支給開始となります。
国民年金 一律65歳からです。
- ● 日独社会保障協定
2000年2月1日、日本とドイツの間で日独社会保障協定が発効しました。
2017年9月末時点で既に17か国と社会保障協定が発効していますが、ドイツはその第1号の発効国です。目的は@社会保障税の二重払いの回避 原則5年以内の滞在の場合は、日独両国の社会保障制度(年金・医療保険)の内、いずれか一方のみに加入すれば良いこととなり日本人の場合は日本の制度に継続して加入すれば良いことになりました。A保険料の掛け捨て防止 年金受給資格の算定の際、両国の年金加入期間を相互に通算して算定できます。その結果、両国の年金受給の可能性が広がりました。
- * 加入期間の通算とは
例えば日本の年金の加入期間が5年の方は、そのままでは受給資格はクリアーできませんが、ドイツの年金の加入期間が5年以上であれば5年+5年以上=10年以上となり日本の年金の受給資格を満たすことが出来るということです。
- ドイツの年金の受給資格の計算の場合も、ドイツの年金加入期間だけでは受給資格を満たさない場合は、同様に日本の年金の加入期間を加えることが出来ます。両国の年金加入期間の加算は、年金額には反映されずあくまでも受給資格の算定上にかぎり活用できるということです。
- また、米国などは日本の年金受給者が米国年金を受給する場合、米国年金の一部が減額されるケースがあります。ドイツは日本の年金を受給していてもドイツの年金には影響ありませんのでご安心ください。
- * 一時派遣期間の延長
社会保障税の二重払いの回避のため原則5年以内の滞在の場合は、日本人の場合は日本の社会保障制度に継続して加入すれば良いのですが、5年を超えて滞在する必要が生じた場合は、派遣期間の延長申請を行なえば認められる場合があります。詳しくは海外年金相談センターのHPに記載の社会保障協定(一時派遣期間延長)http://nenkinichikawa.org/custom7.html をご参照ください。
- ● 国民年金
海外にお住まいの日本国籍の方は国民年金に任意加入することが出来ます。
保険料は月額16,900円、年金額は779,300円(2017年時点。40年間加入した場合)です。保険料の負担も簡単ではありませんが、老後の生活の基礎となるものです。国が半分の費用を負担していますし、年金は老後の生活の基盤となるのみならず、遺族や障害への備えでもあります。資金的に可能であれば加入をお勧めします。また国民年金付加年金制度があります。国民年金の一般保険料に加えて付加保険料(月額400円)を納めると付加年金として「200円×付加保険料納付月数」を受給できます。これは非常にお得な制度で、海外からも是非加入されることをお勧めします。付加年金を2年間受給すればトントン。以降は受給期間1年ごとに「納付した付加保料の総額の半分」ずつお得となります。
- ● 年金の課税
日本の年金は所得ですので所得税の申告をする必要があります。問題は日本ドイツいずれの国で申告するかです。その答えは、日独租税条約で日本の年金は居住されている国で申告することになります。日本の年金の受給者がドイツに住んでいる場合はドイツで申告します。ところがその場合、日本では年金支給の都度、年金額が一定額以上の場合は源泉徴収がされるため二重課税となってしまいます。 - 日本における所得税の免除を受け二重課税を避けるためには、
「租税条約に関する届出書」、「特典条項に関する付表」及び「居住者証明」の3点の提出する必要があります。届出書の提出は最初の年金受給手続きの時と 受給開始後3年ごとに提出する必要があります。3年ごとに日本年金機構から自動的に届出書等の提出書類の案内が送られてきます。
- 但し、日本の年金を受給しても、日本で源泉所得税を徴収されない金額の方については提出を省略することが出来ます。その場合は「租税条約に関する申立書」を提出してください。
提出省略の可能な源泉徴収されない年金額は次の通りです。
- @ 65歳未満の方 年額 70万円未満
- A 65歳以上の方 年額120万円未満(老齢厚生年金・老齢基礎年金合計)
- ● 受給に備えて事前の準備
- @ 年金加入記録の整理
- A カラ期間の証明のためパスポート保有
- カラ期間の証明方法は(1)パスポート(2)戸籍の附表(3)法務省発行の出入国記録(無料)(4)領事館発行の在留証明(無料)
- B 年金事務所にドイツの住所を届けておく
- 年金事務所にドイツの住所を届けておけば、日本年金機構から「年金定期便」や重要な通知が届くようになります。
- C 日本年金機構ホームページ(http://www.nenkin.go.jp/)の「ねんきんネット」の活用。インターネットを通じて自分の年金情報を確認できるサービスです。
- ● 年金受給者の方へ
- @ 現況届 生存確認のため、毎年誕生日月に現況届の提出の案内が日本年金機構から届きます。在留証明を同封してハガキを機構に返送します。在留証明は領事館で無料で発行されます。2回目以降は郵便申請が可能です。
- A “年金の課税”の項目で説明した「租税条約に関する届出書」の案内が3年に一回届きます。年金額が日本での源泉徴収金額以下であれば届出書を提出する必要はありませんので「租税条約に関する申立書」を同封して返送してください。申立書が無い場合は、“年金額が源泉徴収金額以下なので「租税条約に関する申立書」は提出しません”という趣旨の手紙を同封して返送してください。
- B 受給者の方が亡くなられた場合
- ● 年金の受給期間は受給資格を取得した月の翌月から死亡した月までです。年金の支給時期は偶数月つまり2,4,6,8,10,12月の年6回振り込まれます。支払月に前月、前々月の分が支払われます。例えば4月振り込まれるのは2月分と3月分が振り込まれます。4月に死亡された場合、4月分まで支給対象となりますから6月になって4月分が振り込まれることになります。
- しかし死亡届けが提出されていないと5月分も自動的に振り込まれてしまいます。そうなった場合は5月分を返却する必要が生じ面倒な手続きが発生してしまいます。ですからこの場合、5月分は振り込まれないように死亡届を早く提出する必要があります。
- ● 死亡届が提出されないと最大1年間分の過払いが生じ、その分を日本年金機構に返却する義務が発生します。最大1年となる理由は、毎年「現況届」が誕生月に提出されないと年金の支払いが自動的にストップするからです。
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では年金受給中の方が死亡した場合、周りの方はどう対応すればよいのかをご説明いたします。
- ● 死亡届が提出されないと最大1年間分の過払いが生じ、その分を日本年金機構に返却する義務が発生します。最大1年となる理由は、毎年「現況届」が誕生月に提出されないと年金の支払いが自動的にストップするからです。
では年金受給中の方が死亡した場合、周りの方はどう対応すればよいのかをご説明いたします。
- ● まず日本年金機構か年金事務所に死亡した旨の第1報を連絡します。その場合、亡くなられた方の@基礎年金番号A生年月日B名前C住所D死亡日 を伝えます。これにより支給はその時点で停止されますので過払いを止めることが出来ます。予め@からCまでを記載した死亡通知書(形式問わず)を用意しておき、死亡日だけを記入した上で年金事務所にFaxするのが一番簡単です。年金事務所は何処でも良いのですが、例えば千代田年金事務所であれば電話(+81-3-3265-4381)かFax(+81-3-3262-6249)で連絡が可能です。日本年金機構の電話は81-3-5344-1100です。
● 正しい手続きは、日本年金機構宛の「年金受給権者死亡届」(様式第515号)を用意しておき、亡くなられた場合は親族の方が死亡日等記入して日本年金機構(〒168-8505 東京都杉並区高井戸西3-5-24日本年金機構本部 業務渉外部外国給付担当係)か年金事務所に郵便で送付します。これで年金の受給を止め、過払いを防ぐことが出来ます。