(第5回)各種文化、宗教上の違い(→国際結婚・価値観の違い)
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グレーな私
国際結婚をすると、否応なく文化について考えさせられます。自分の慣れ親しんだ日本文化、そしてパートナーが今まで過ごしてきた文化。本来文化とは、ラテン語の「耕す」を源とし、その土地を発祥地とし、その地域住民で支えられ、根付き、成長発達し、栄えていくものです。次代と共にその社会に理解を受け、伝道され、洗練され、変化していくものです。文化を持つ生物、これが人間と動物の違いともいえるかと思います。言語文化から始まり食文化、衣文化、住文化、スポーツ文化、浮世絵などの絵画文化、落語や能からポップカルチャーまでの娯楽文化まで数え始めたらきりがありません。
日本を(国旗の一色からとって)白とします。ドイツを(同じように国旗から一色とって)黒と例えます。すると、国際結婚をした二人の間に生まれた子供たちはグレーなんです。これが素晴らしいことなんだと認識されると、育児が、日常生活の一つ一つがぐっと楽しく、そして充実した、価値ある社会的役割であることに気づかれるでしょう。国際結婚しているカップルにとって、一生が国際大使役者で、毎日の生活がサミット開催、そんな中で何かを決定することはオペレーションなのです。国際結婚の場合、毎日がポジテイブな意味の「グレー」だらけの一言に尽きます。
もっとわかりやすく話すと、日本とドイツの育児を日々体験している私たちは、両方の良い点悪い点を否応なく比較し、良い所を集約して子供たちに伝えていきます。人間は楽を好む動物ですので、体内のフィルターが勝手に作動し、良い体験は伝達、悪い体験は反面教師として逆実行し、それ以外を流し落とすようにします。子供の頃に受験勉強で苦しんだ人は、ドイツの自由な学校生活を肯定するでしょう。ドイツの学校で音楽や美術に時間を割かない学校生活を過ごした人は、日本人が様々な楽器を一応弾けたりするのを見ると驚き、自分の子も日本の学校へ、と憧れます。自然選択が、言葉通り自然に実施され、両親が作るグレーな家庭文化が生まれるのです。そこは白でなく黒でない、その家族だけに成り立つ独自のものです。どうか、グレーな文化を白くしよう、黒くしようと努力しないでください。無理です。
複数文化交流の中心を担わなければならないのが、国際結婚者だと私は思います。なぜなら、前述のグレーな期間を延長し、子供や、孫、などを通じてこの文化交流を長期化する方法を担えるのが国際結婚組だから。ドイツ人が日本の文化に興味を持ち、言語を学び、日本の文化を習得する。大事なことです。日本人がドイツ文化に憧れ来独し、大学へ行ったり、美術学校で学んで、将来職業として営む。素晴らしい。けれどそれは1代で終わってしまうかもしれません。文化は、継続、伝承して初めて、その深さを重みを増長することが可能で、そして地域に利得を与えることが可能なのです。耕した土から収穫を得、次の世代へ種をこぼすことが可能なのです。その時間延長を可能に出来る、国際結婚カップルが住みやすく、育児しやすく、仕事しやすい環境を築いていくことが、文化交流の源泉/基盤だと思います。
ドイツ人が日本文化に興味を持ったり職場を探す場合、どこへ行くでしょうか?これはJIHKや日本クラブ、日独協会が実施しています。日本に在住する日本人がドイツに興味を持つ。これは日本の大学やテレビなどのメデイア、旅行会社、そして多和田葉子氏などの作家の方々が貢献されています。では、日々、この地でドイツの文化を行き来し、そして伝達し、子孫に伝承していくチャンスを持つ国際結婚組への認識や待遇、そしてサポートはどうなっているでしょう。国際結婚組の就職や経済的安定をだれが保証し、その該当者が能力を生かす場があるでしょうか? 私は縁があって国際離婚組の離婚相談やメデイエーション、そして国際結婚組の子供たちのいわゆるハーフの育児相談や親権取得に関する相談などを現地ドイツ人の心理学者と対応して3年目になります。話し合いの中での大きな争点は、文化の差異を基盤としていることが多いです。幼少時の生活環境そして教育環境が全く異なる2人が、ともすると同国出身者でも試練である夫婦生活や育児、就業や家事など、多方面に渡る課題を担わなければなりません。もし離婚すると決められた場合、そこに残るのは国際文化理解ではなく嫌悪・否定そして日本やドイツへの拒否にこと他なりません。磁石のように吸引されて結婚した夫婦が、極が変わってしまい、反発し合うように日独文化交流反発し、もうこりごり、となることもしばしば。では、どうしたらいいのでしょうか?予防措置は?
@ 文化は違うものだ、ということをいつも念頭に置き、説明や紹介を怠らない。(これぐらい愛日家ならわかるでしょ、と勝手に想像しない。)
A 国際結婚組同士の交流するコミュニテイーを探す。できれば同年齢者、もし育児や教育についての関心がある場合は、相応のグループを探す。
B 相互の文化に拒否感を持たず、バランスよく双方の文化吸収と維持に努める。(どちらかの言語が長けると、ついそちらに頼りがち。けれどその負担が時間と共に相手には重荷になることも想定しておいて、相手の言語や文化に敬意を払い、吸収/交流する努力を惜しまない。
今、国際結婚をしたいと思っている人、付き合っている人がドイツ人、色々な不安や悩みがありませんか。みんなそんなもやもやや葛藤、荒波を乗り越えてここまでやって来、それぞれのグレーな家族文化を築き上げています。お住いの近くに、日独交流の場(日本クラブやそれ以外の非営利団体)がありませんか?一度覗いてみられると、さまざまな先輩方がいらっしゃり、交流や意見交換の場を提供しています。一見「私みたいな若い人間がこの会に不適?」と思われても、勇気をもって暖簾を押してみてください。思いがけなく新鮮なアイデイア、そしてかけがえのないコンタクトや情報を得られる貴重な場となるかもしれません。ネット時代で、各方面から様々な情報であふれていますが、人間やっぱり張本人に会って感じる何か、化学反応とでも言いましょうか、があるものです。年齢層の違う方も、今まで知っていることを伝授したい、逆に若い人たちから教えて欲しい、と感じています。
文化は交流し、変化し、伝達され始めて歴史の一つに加えられるのです。こうして国際結婚をした一人として声を大にして言いたいです。私のとっておきのレシピ、子供はこの価値を理解してくれないけど伝えたい、という物がありませんか?せっかくの素晴らしい能力や知識、技術が一代で閉ざされてしまうのはもったいない。知らないから一人で困った、結局離婚するしかなかった、で終わってしまうにはもったいない。
文化伝承そして交流の条件には、お金がかからない、(準備とか不要)簡単であること、規則が少ないこと、その時代背景に適応していることを満たしていないと、進行そして長続きしないでしょう。
日本人にとって、ドイツのどんな点に興味を抱くのでしょうか?移住してみたい国、と思うためのドイツの紹介には、すべて大人になってみないと味わえない豊かさばかりです。逆に日本はどうでしょう。小さな子供から、任天堂やポケモンゴー、コスプレなど様々な、幼児でも楽しめるものがたくさんあります。幼稚園では必ず折り紙をします。
ドイツの子供の生活が豊かで、創造力を育成する基盤づくりを重視している点など、もっとアピールするべきではないでしょうか?実際国際結婚をして、育児をされるお母さんは、日本語履修の為に補習校にはいかせますが、せっかくの機会だしと現地校にお子さんを入れるケースが多いです。日本にお住いのお母さんも、元もっとゆとりあるのんびりとした生活を子供に与えたいと思ってもできないのが現実です。
ドイツの良さは、自然の豊かさ、Gemütlichkeit (居心地の良さ/安楽)人間性を豊かにするための人間教育(受験に合格するとか、就職するためだけではなく)かと思います。そして自我育成、独自主義に徹底しているところ。かといってわがまま無責任なのかといえばそうでもなく。何度でもチャレンジできるところ。宗教的背景も加味されみんなで子供を育て、みんなで困っている人を支えよう助けようとするところでしょうか?デザインや建築、芸術の豊かさや、勿論音楽の心や文化を育む環境も整っています。
何かの縁でこの地に住み、人と出会う。そこで偶然築かれるのが、カルチャーで、それは水のように流動するものだという事、これを常に念頭に置いておくと、きっと素敵な国際結婚生活が営めると思いますよ。
墨絵には色々なグレーがありますよね。時には濃く、時には白のように薄く。それでいいんじゃあないですか?
お住いの近隣に、日独コミュニテイーだどこかにあるでしょうから、積極的にコンタクトを取り、同郷者、先輩方から、色々知恵をもらってください。一人で悩むことはありませんよ。
執筆:フィッシャー平松さん(「竹の会」理事・日本とドイツの看護師、デュッセルドルフ)
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