(第1回) ドイツで国際結婚すると、言葉が変わる
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そうです、当たり前なんですが、これが意外に難しく、これが原因で誤解・喧嘩をし、時には関係に不信感や不安を生みます。逆に言葉はでは100%通じ合えなくても感性が通じ合って、結婚相手と幸せに過ごされる国際結婚夫婦がいらっしゃいます。言葉をはじめとするコミュニケーション、ここに国際結婚の成功の鍵があるので、言葉に注目してみましょう。
皆さんの母国語は、日本語だとします。そうすると皆さんのパートナーにも母国語があります(例:ドイツ語)。では、二人の共通語は何でしょうか?パターンとして3つ考えられるでしょう。
1 私の方が相手に合わせて、ドイツ語を話す。
2 向こうが私に合わせて日本語を話す。
3 第3か国語を二人の共通語として決める(例:英語)
@の場合、ドイツに住み、私もドイツ語を話す、パートナーとの共通語もドイツ語、となれば、一見丸く収まっているかのように見えます。その周囲、ご近所からも、「適応している」とみられるでしょう。でも実際、日本語のレベルと、ドイツ語のレベルにギャップが大きくある場合、心の葛藤が生まれます。自分のドイツ語がもどかしく、幼稚に思え、学歴以下、もしくは子ども扱いされる自分に悩むことがあります。私が日々「闘って」いることに誰も気づいてくれません。
Aの場合、相手の日本語レベルはどうでしょう?母国語レベルで話せれば問題ないのでしょうが、大抵ギャップがあります。相手の日本語レベルに合わせて、幼稚な回りくどい言い方になる。@と同様、大人としての日本語会話がしたくなる!それをきっとパートナーの方も同様に感じてらっしゃいます。外国人の私がいつまでも適応しない、と非難めいた周囲からの冷ややかな視線に辛い思いをする場合もあります。
Bの場合、二人がドイツに住むとして、二人の間では、その言語(例:英語)で100%不自由はないかもしれません。双方にとっても第2か国語なのでレベルも対等です。でも親戚を交えての誕生日会、近所付き合い、里帰りをしたとき、幼稚園や学校といった状況ではどうでしょうか?そのパートナーが、いつも仲介役(通訳)を担ってくれますか?
では、こういった状況を改善するにはどうしたらいいのか、どういった援助機関があるでしょう?
忍耐:
まずは自分とパートナーの共通語のレベルを出来る限り同等に持っていくよう相互が努力し(語学学校に通う)、間違いも寛大な気持ちで容認する。AまたはBの場合でもドイツで住む限り、ドイツ語は必須です。相手は本人の成長のためにと思って悪意なく修正してくれるのですが、親切なドイツ人から文法を直されることがあると、馬鹿にされた気になったりしませんか?。そんなときは、ふーっと深呼吸してみましょう。語学学校なら減点されるところを親切に無料で指摘してもらえたのですから。
寛大な気持ちで:
ダパーニッシュ(Dapanisch)、ってご存知ですか?ドイツ語と日本語の混合語です。日本語にドイツ語が混じり、文章の立て方もドイツ語っぽくて、でも通じてしまう。実はそれを実子に指摘されました。以来無理してドイツ語話そうとか、日本語頑張れ、といった肩肘を張ることがなくなりました。来独数年で、完璧にドイツ語は喋れません。ダパーニッシュで、いいじゃあないですか。
相談する:
皆さんのお住まい地域にきっと邦人用のクラブや非公益法人があると思います。そこを覗いてみられると、きっと、あああ、同胞がいた、と安心されることでしょう。その方々に、40年も国際結婚をキープできた秘訣を聞いてみるのもいいかもしれません。近隣にない場合はメールでの相談も行っていることが多いです。一人で悩まず、まずは相談してみてはどうでしょうか?1800年代の、国際結婚第1期生ではないのです、私たちは。思い詰める必要はありません。
絆は言葉だけじゃない:
恋愛関係すべてにおいて共通することでしょうが、相手に対する敬意があれば、理解力・表現方法もぐんと変わってきます。この人と巡り合ったときの感動、心を思い出しましょう。物を見る視点が逆転します。そして、パートナーシップは言葉と同様、成長し、変化し、かみ合っていくものなんです。この変化に自分も合わせ、過去にとらわれず、今、そして今後に目を向けましょう。完璧、ってないものです。おいしい食事を作って一緒に食べる、お散歩をする、一緒に趣味を楽しむ、旅行をする、など、言葉以外にもたくさんの、人間関係の潤滑油があります。これを通して国際結婚をスムーズに営んでらっしゃるカップルがたくさんいらっしゃいます。
もしそれでも辛く、途方に暮れ、外部の援助が必要な場合は、市町村のFamilienhilfe ,Eheberatung, Ehrtherapieなどを通し、2人だけでは和解困難な項目について、第3者(通常心理学者)を司会にして、まずは会話の場を作ってみましょう。地元の社会福祉団体が、地域によって通訳をつけて実施しています。単なる誤解、そして同国者結婚でも生じる、カップル相互の成熟過程で生じるトラブルなのかもしれません。
もし国際結婚カップルに子供が生まれたら。その子は何語を話す?同日本語を教えていったらいいか?などは(国際結婚→いわゆる«ハーフ»の子の言葉について)お話しします。
年老いて、日本語が話せなくなったら?ドイツ語が話せなくなったら?(国際結婚→老後)この悩みについてもお書きします。
執筆:フィッシャー平松さん(「竹の会」理事・日本とドイツの看護師、デュッセルドルフ)
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